ママンから物資が届いた。
その中にあったのは押切蓮介先生の『ピコピコ少年』と『猫背を伸ばして』。
『猫背を伸ばして』は押切先生の漫画エッセイ。絵面のわりにお母さんが意外と良いこと言っているので、水木しげるの『のんのんばぁとオレ』のような雰囲気があった。
『ピコピコ少年』の方は押切先生の少年時代からのゲーム遍歴を漫画化したものだが、やはり少し年代にズレがあるのか『あるある』と思える箇所は少なかった。
ピコピコと言えばボクが初めて遊んだゲームは叔父からハードごともらったファミコンのマリオだった。そのあと親にスーパーファミコン、ゲームボーイ、プレイステーション、プレステ2、ワンダースワンを買ってもらい、大学卒業を契機にソフトも全部売り払ってしまった。
アーケードゲームと言えばストリートファイター2が初めてである。だが格ゲーがヘタなボクは友人のプレイを見ているだけで、ゲーセンではもっぱらコインゲームのじゃんけんとかコイン落としなんぞをやっていた。
ある友人は脱衣麻雀ゲームをやりこみ、とうとう脱がせるまでに成長した。脱衣シーンを見ようとみんなで筐体を囲んだことは良い思い出だ。
雪虫に似た柳の種子『柳絮』が空を舞う頃、ライチを積んだリヤカーが北京にやってくる。
検疫等の問題で日本では食べられない生のライチが中国では食べられる。日本で見る冷凍物のライチは茶色く魚の鱗のような平べったい皮をしているが、生のライチは銅色と緑色の斑になっており、表面には無数のイボがついている。しかしバナナを剥くようにヘタの方から皮を剥ぐとすんなりと半透明の白い果実が顔を出す。
中国では日本と比べものにならないほどの種類の果物を見ることができる。味の面では劣っている果物も多いが(リンゴやイチゴは日本の方が甘い)、珍しい果物が安価で手に入るのが魅力だ。
急に暖かくなり半袖でも外出できるようになった天気の今日もマンションの近くにどっから来たのかわからない果物売りがリヤカーを引いてきた。
ラインナップはイチゴと野球ボール大の瓜、そしてライチ。
いくらだ?と聞いてみる。ライチは一般の果物より値が張るからだ。
「今の時期だとスーパーじゃあ一斤(500グラム)30元だけど、うちは20元だよ。さっきも5斤買っていったお客さんがいてね、ライチはダイエットにもなるし美容にも良いから買ってくといいよ」とセールストークをかますオジサン。
「なんだったらちょっと味見していってよ、美味かったら買って、不味かったら買わなくて良いから」
この言葉にボクはオジサンが好きになった。
味見させて→ダメだ!
なんて拒む果物売りはいないが、向こうから味見しろと声をかける人は少ない。
小ぶりのライチを一つつまむと、指の腹にイボが貼り付く。まだ青い固い皮を破くと指が果汁でひやりと浸みる。味は旬の時期のものより若干酸っぱかったが、それが逆に初物らしい。
オジサン込みで気に入ったんで1,5斤も買ってしまった。
冷蔵庫で冷やして食べるとこれがまた涼しげで、勢い余って冷たい果汁が顔にかかるのも心地が良い。
ピークだと1斤=7元ぐらいまで値段が下がり、一回り大きい品種も登場するのでこれからの季節、リヤカーを覗くのが楽しみだ。
枇杷を買った。
果物売りのリヤカーの中にホヤみたいな形の黄色い果物を見た。東海林さだおが本の中で枇杷なんか旬の季節がいつかわからないし、食っても食わなくてもいいものだけど一応抑えておきたい。と言い捨てられていた枇杷が売られていた。
ボクは枇杷が好きだ。黄色い皮を爪で剥いで、前歯で果肉をこそぐように食べる。際立った美味さはないが手に溢れる果汁の瑞々しさが如何にも初夏らしい。
そんな枇杷を中国人はどう扱っているのか。枇杷好きとしては海外でも冷遇されるのは忍びないので調べてみた。
のど飴の材料に使われる以外あんまり応用性がない。種はでかいし果肉は薄いので丸ごとかぶりつくぐらいしか味わい方がないのだろう。店でカットされた状態で出て来て欲しくない。
良く言えば無個性、悪く言えば自己主張なし。そんな扱いに困る問題児。味や見てくれが原因じゃないのに不人気果物。冷やした方が美味いのか、そんなことまでいちいち考えさせられる扱いづらい良い子ちゃん問題児こと枇杷。同じ種デカ仲間のライチはいろんな商品化が決まっているというのに、枇杷はジャムとかゼリーとか別に枇杷じゃなくても良いものばかり。産地はと聞いたらどこの県も声を潜める私生児。
甘からず酸っぱからず、リンゴや葡萄のように素直に味を形容できず、梨のように歯触りを楽しむものでもない。枇杷って本当に不遇だ。
しかしリヤカーで買った枇杷は美味しゅうございました。ただ、次にリヤカーを覗いたときは甘酸っぱさがウリでかぶりつくとアゴまで果汁が垂れるプラムに替わってた。だから枇杷よ、お前の季節はいつなんだよ