別人家的校服/漫友文化
中国を含む世界各国の実在する制服のイラストや制服をテーマにした漫画などを載せた画集です。出版元の漫友文化は以前にも『料理美男図鑑』、『理科美男図鑑』、『文科美男図鑑』と言った料理や学校の教科を擬人化した画集を出していましたが、今回はちゃんとモデルがあります。
料理美男図鑑 料理擬人化画集
理科美男図鑑及び文科美男図鑑 漫友文化編(黒龍江美術出版社)
見どころはやはり中国の学校の制服が載っている点ですね。中国の学生は一般的にジャージを着用しているのですが、本書に紹介されるように一部の学校では『制服』が指定されています。上海や広州には制服指定の学校が多いとは聞いていましたが、まさか北京にも制服の学校(しかも女子校)があったとは思いませんでした。
(北京・華夏女中)
中国以外には台湾・香港、韓国、イギリス、ベトナムなどの制服が紹介されており、日本からは大阪市立梅南中学校、東海大付属相模高等学校・中等部、岡山県岡山市就実高校、千葉萌楊高校の制服が掲載されていますが、これらの学校はどんな基準があって選ばれたのでしょうか。
(広州・広雅中学)
(岡山県岡山市就実高校)
こう比較するとスカート丈が中国と日本でだいぶ違うのに気付かされます。
本書には他に学校が開催した『制服デザイングランプリ』に自身が考えたデザイン案を投稿する女の子を描いた漫画や、実際のモデルを起用し青春を感じさせる高校生活の1シーンを写した写真などが掲載されていてけっこう読み応えがあります。漫友文化には擬人化シリーズよりも実在する文化をもっとイラスト化して欲しいですね。
中国の小説評論家・華斯比(Huasibi)氏が2014年度の中国サスペンス小説のTOP10を発表していました。目を通してみると私がチェックしていない作品ばかりだったので、この場を借りて華斯比氏のお眼鏡に適った作品を彼の書評とともに紹介してみます。
尚、このランキングはあくまでも華斯比氏が独自に決めた順位であり、何ら公式的な意味はありません。また、各作品の和訳タイトルは全て私が勝手に付けた仮訳です。
第10位 『被●走的秘密』
(●は諭の部首を人編にした漢字)
「盗まれた秘密」 著:鬼馬星 上海人民出版社
鬼馬星『民国秘事』シリーズの第一部であり、中華民国時代を舞台にした長編サスペンスミステリ小説。
このような「民国ホームドラマ」的なサスペンス小説は少なくないし、「事情聴取式ミステリ」のような暗い話は読むのが嫌になるが、作者はキャラクター造形と感情の表現に工夫を凝らしていて、「事情聴取式ミステリ」でアリバイや交友関係を尋ねた時に付いてくる重苦しい叙述を緩和している。
第9位 『焚心祭』
「焚心祭」 著:鬼古女 上海人民出版社
作者の『罪ファイル』シリーズの4作目であり、前作3作と違って章が分かれておらずストーリーがテンポ良く進展し、純サスペンス的な作風でこれまでにあったホラー的な作風とは異なっている。伏線が多く社会派的な観点がある。だがミステリ面が素晴らしいと思っていたのに、結局は『大勢が口裏を合わせて嘘を吐いている』というよくある手を使っていたのが残念だった。(ネタバレだな!)
第8位 『桐花中路私立協済医院怪談』
「桐花中路私立協経病院の怪談」 著:南瓊 上海人民出版社
『奇幻・懸疑世界』で大々的に連載されていた作品だった。腐向けで女の子に絶大な人気があった。だけど連載版の責任編集者である私(阿井注:華斯比)と単行本の責任編集者が『懸疑世界』から去ってから長い時間が経ってようやく出版できた。
第7位 『邪悪催眠師2:七個離奇的催眠殺局』
「邪悪催眠術師2 7つの奇妙な催眠殺人事件」 著:周浩暉 海峡書局
2014年6月に『邪悪催眠師2』(原題『心穴2』)を読んだ時にとってもタイムリーだなと思った。イヌ好きが引き起こす連続殺人事件で、羅飛(阿井注:シリーズの主人公である刑事)版の『セブン』だ。(阿井注:去年5月か6月に話題になったライチ犬肉祭のことを言っている?)
犯人の模倣犯と自身のやり方を隠す手法は共に見事だ。三番目の事件の科学的トリックは『探偵ガリレオ』のデジャブがあり、2番目の事件でダッチワイフが死体の下半身を切り刻むという手法はけっこうエロかった。
第6位 『推理之王1:無証之罪』
「推理の王1:証拠のない罪」 著:紫金陳 湖南文芸出版社
『高智商犯罪』シリーズ(原題『謀殺官殺』シリーズ)の作者の新シリーズ『推理之王』1作目。本書は極めて庶民的な推理小説であり非常に「リアリティ」のある小説だ。完璧な証拠がないので、推理は完璧だけど犯人を逮捕することができない。小説全体が「証拠」を中心に展開していき、探偵が犯人の犯行の一部始終を説明すると犯人が驚いて全部白状するというような推理小説は嘘っぱちだ。
この本は以前にマイクロブログで知り合いに「読むだけ時間の無駄だ」と忠告されていたにも関わらず、冒頭部分が非常に引き込まれる話になっていたので期待して読み進めた結果、半分ぐらいのところでこれ以上読むのが辛くなり放棄しました。
この本をジャケ買いならぬタイトル買いした読者は少なくないでしょう。『単身太久会被殺掉的』、日本語に訳せば『独り身が長いと殺される』という目を引くタイトルだ。更に英語の副題がFind a Husband Before the Killer Finds Youとなっていて思わず苦笑いが漏れます。
ただし、とあるレビューでこのタイトルが『我的妹妹不可能那么可愛』(俺の妹がこんなに可愛いわけがない)、『問題児童都来自異世界』(問題児たちが異世界から来るそうですよ?)といった日本のライトノベルみたいだという指摘にはあまりピンと来ません。
単に文字数の多さが似ているだけでインパクトでは全然劣ります。日本のライトノベルみたいなタイトルと言うのであれば『単身太久的我終於被殺掉了!』(ずっと独身だった私がついに殺された!)ぐらいないと。(中国語の正確性は保証できません。)
本作のあらすじは以下です。ホント、始めの数十ページは面白かったんですけどね…
法律事務所に働く周遊は高学歴で高収入だがまだ独身という典型的な余女(行き遅れ)であり敗犬女(負け犬)(注:原文ママ)だった。その彼女が事務所の女ボスから自殺案件の調査を頼まれる。それは、大手の製薬会社からの依頼であり、新薬の抗鬱剤の治験をしていた女性が突如自殺し、女性の遺族が自殺の原因は新薬の副作用にあるとして製薬会社を訴えていることに対し、原因が薬とは無関係であることを示す証拠を探すという内容だった。
事件を担当している刑事の王小山の協力の下、自殺した女性がネット掲示板に投稿していることを掴み、そこから彼女が死ぬ前に失恋していたことが判明する。自殺は失恋によるショックと考え依頼の成功を確信する周遊であったが、死体の状況を思い返してそもそも他殺ではないのかと疑い始める。そして、日を置かずまたもや同じ抗鬱剤の治験をしていた女性の自殺が起こり、彼女は再び調査に乗り出す。立て続けに起こる自殺は抗鬱剤の副作用なのか、それとも連続殺人事件なのか。
裁判に勝つ証拠を探すために法律事務所の人間が探偵の真似事をするという切り口が面白かったのですが、それ以降はただただ読みづらく、展開の把握しにくい小説でした。
なんでこの本が私にとって読みづらかったのか、以下の3つの原因が挙げられると思います。
九度空間 著:赤蝶飛飛/中国文聯出版社
私は中国の小説をレビューする際はあまりネガテイブなことを書かないようにしています。何しろ中国の小説なんかレビュアー自体が少ないので私の拙い、場合によっては誤ったレビューがその作品と作者の評価になってしまうと私、作者、そしてレビューを読んでくれた方三者にとって良い結果を生まないからです。だからその作品が駄作であってもレビューするならなるべく面白かった箇所を取り上げようと思っていますし、批判する場合は中国のアマゾンや豆瓣などのレビューに目を通して、私の読み間違いということがないよう自分の理解が正しいか確かめてから書くことにしています。
しかし中国帰国後に読み進めていた赤蝶飛飛の『九度空間』が以下の三点で一般的な駄作から頭を一つ抜けていたので今回は取り上げることにしました。
1.年明け一冊目にレビューするにしてはあんまりな出来だった。
2.微博(マイクロブログ)で自分以外に批判している中国人がいて内容が更に辛辣だったから。
3.2に対する作者の弁解?が面白かったから。
さて、日本のクソゲー業界では年末には魔物が出てくると言われていますが、それは中国ミステリ/サスペンス小説業界にも当てはまるんでしょうかね。今回は2014年11月に出版され、その帯文に『スティーブン・キング的な始まり方、東野圭吾的な方程式による謎解き、ヒッチコック的などんでん返しの結末』と銘打たれ、更に『怪談協会』(中国のホラー映画)、『死神来了』(ファイナルディスティネーション)、『致命ID』(アイデンティティー)の総合体験とまで書かれた、いろんな作家や作品のキャラクターがごちゃ混ぜになった中国サスペンス小説のキメラこと『九度空間』を紹介します。
・あらすじと内容
中国のスティーブン・キングと呼ばれ、中国どころか世界的に有名なサスペンス作家・陳嵐の熱狂的な読者である10名の男女が彼の財産を継ぐために集められる。財産を受け継ぐ条件とは、陳嵐の新作である9つのサスペンスストーリーを外部との連絡が遮断された別荘で9日間聞くということであり、話を聞くにあたって9つのタブーを守らなければならなかった。だが初日にタブーを破った人間がいきなり死に読者は9人となり、更に陳嵐のストーリーに合わせたかのように毎日誰かが被害に遭う。これは呪いなのか、それとも財産を狙う何者かの犯行なのか。サスペンス作家のニューエイジ赤蝶飛飛の超長編シリーズ。
本書は作品の中で登場人物により本編と関係のある別の作品が展開されるという要するに入れ子方式です。ですがこの入れ子方式に問題があって、合計9話に及ぶ短篇の一つ一つがやたら長いのです。本書の合計ページ数が250ページに対し、第一話目が50ページ程度あるため、読んでいる時にちゃんと完結するのか不安になりましたが、なんと本作はこれ1冊では終わりません。上中下巻の3部構成になっているのです。だから帯に『超長編シリーズ』と書いていたのですね。(中下巻は未発売)
そしてストーリーを陳嵐が口述しているという体裁のため短篇が終わる度に本編へと戻るのですが、その際に読者たちがその短篇が如何に素晴らしかったか陳嵐を褒め称えます。それが作者赤蝶飛飛自身への自画自賛にしか見えません。そして、その短編自体がそれほど面白くないので、我々読者が作中の読者に全然感情移入できないのです。
本作にも主人公がいるので彼のみ一歩引いて冷静な目で短篇を批評することにより実際の読者と気分が共有でき、またその作品に込められた謎などを考えることができるのでしょうが、作中で微妙な出来の短篇を手放しで褒められるとまるで作家が私達読者にまで「さぁ褒めろ」と強要しているような気にさせられます。
またここが一番重要なのですが、本作はサスペンス小説のジャンルであり本書で発生する事件はどれも人外の力が働いているとしか思えないのですがその結末には決して「精神病」や「幻覚」、「二重人格」、「催眠」及び宇宙人や幽霊などの非常識な要素を謎解きに使わないと作者赤蝶飛飛は前書きで約束しています。
であれば、その言葉にウソがないことを証明するために、本書で起きた怪異にしか見えない事件の一つでも推理によって解決してほしかったのですが、本書はまるまる1冊使って『謎編』だけで終わります。
他にも色々言いたいことはあるのですが、3部作の大事な1冊目なのに2冊目以降買う気を起こさせない内容なのは作者云々ではなく出版社に問題があると思います。これ完結するんでしょうか。