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1983/06/25
職業:
契約社員
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ビルバク
自己紹介:
24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。
副管理人 阿井幸作(あい こうさく)
28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。
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中国サスペンス小説 陰森恋人
2012/11/20 [Tue] 02:07
燕南飛と凡一の合作ミステリ首席探偵陸凡一シリーズの三作目。
本書がシリーズ最終章だとどこかで眼にしたが、むしろこの終わり方で四作目に続けたら大したものだと素直に褒めたい。
今度の舞台は墳峰村という名前が若干不吉な山間の村。過去に原因不明の疫病で大勢の村人が死に倒れ、未だに迷信深い土地柄のままになっているその村で起きた猟奇殺人事件が起きた。現場には40センチ以上の駆り出された陸凡一は、既に到着していた同僚の欧陽嘉や現場の警察官馬所長らと共に捜査に当たる。現場に残された28センチを超える大きな足あとと強大な力で引き裂かれた死体を目の当たりにした刑事たちは山に住む野人か怪物の仕業を疑う。また病院では全身の血を抜かれた看護師の死体が見つかり、猟奇殺人事件はますます常人の理解の範疇を超えていく。
ミステリの定石を考えると一連の事件は怪物や超常現象の仕業に見せかけた人為的なトリックであることは想像つくし、陸凡一や欧陽嘉もその前提で捜査を進めるのだが、読者としてはもしかしたら本当に怪物が出てくるかもしれないという不安が消えない。しかし、そんな不安など物語ラストを読めばまだ作者に遠慮していたとわかる。
その後物語は閉鎖的な環境を利用して村を陸の孤島にしたり、恐慌状態の村人を魔女裁判じみた行動に走らせて警官と一触即発の状態にさせたりと緊迫感を増していく。また『陰森恋人』とタイトルにあるように、ある登場人物の昔の恋人が猟奇殺人どころか過去に起きた疫病にも関わっていたという真相や、その他の人物の過去が明らかになると、先ほど自白したばかりの犯人が語った動機が突然信用出来なくなり、彼らの人間関係を疑うことになる。
20数年前に蔓延した疫病のそもそもの原因が村に隠されていた『731部隊』の細菌施設であったように、実行犯が判明したとしても彼を犯罪に駆り立てた黒幕の存在がいるので、犯人の自白に隠された真意を見ぬかなければいけない。
圧巻なのはラストだろう。まさかハリウッドのB級映画さながらのオチを持ってくるとは思わなかった。そもそも、疫病や細菌などの殺人をするにはとっても便利な小道具があるとは言え、ミステリ小説で正体不明の毒やウイルスを使うことは禁じ手だ。しかし、ミステリ小説としてのオチを付ければ、あとはパニックホラーとして展開させても文句ないだろうという作者の決断には恐れいった。
ラスト1ページで思わず
『なに・オブ・ザ・デッドだよ?!』
と呆れ返ってしまった。
この結末を考えたのが燕南飛と凡一のどちらかわからないが、1作目の『遺骨档案620』でも感じたように、この作者は映画的なエンターテイメントと古典的なミステリを組み合わせて万人受けしそうな作品を作りたいらしい。
その試みは評価したいけど、スケールのでかいハッタリをかますのであればそのインパクトに耐えられる器としてのストーリーが必要なわけで、今後も読者の意表をつく展開を書き続けるのならばそれに見合った設定や背景を下敷きにして欲しい。
陸凡一が冤罪にかけられなかったことも不満の一つだ。
陸凡一の仲間にしてライバルの欧陽嘉は女ホームズというあだ名を持ち、刑事にして名探偵の陸凡一と推理合戦を繰り広げるわけだが、
『事件をそこまで詳しく分析できるお前は犯人に違いない』
という論法で同僚を冤罪にかけることに長けたとんでもない女である。2作目のときなど、いくら結婚式当日に旦那が殺されて精神的に参っていたとは言え、誰よりも懸命に事件の真相を追う陸凡一をまたもや犯人だと疑った。
陸凡一とのライバル関係こそが欧陽嘉の最大の持ち味であり、冤罪をかけられてからが陸凡一の真骨頂だった。しかし陸凡一が犯人である可能性が100%有り得ない本作では、さすがの欧陽嘉も無実の罪をかけることができず、陸凡一と一緒に捜査するだけの単なる下位互換キャラに成り下がってしまった。
冤罪がなければ陸凡一シリーズとは言えないだろう。『なに・オブ・ザ・デッド』的世界からミステリ小説世界へと力技で戻して、4作目を書いて欲しいのだが難しいだろうか。
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