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24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。
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武道狂之詩 巻一 著:喬靖夫
2013/02/05 [Tue] 23:56
武道狂之詩 巻一
(簡体字版)
推理小説ばかりではなく武侠小説のジャンルもチェックして知識を仕入れなくてはと微博で話題になっていた本を購入したら、これが予想以上の当たりだった。用語や表現は武侠小説に慣れていないと理解しづらいところがあるが、文章自体は非常に軽妙だ。フォントいじりも使用しているので、本書は
ライトノベル武侠小説
と読んでも良いのかもしれない。まぁ喬靖夫先生の香港拳法でボコボコにされるかも知れないが。
中国は明代正徳の時代、青城山には『巴蜀無双』(注:巴は今の重慶、蜀は成都)を掲げる武術集団『青城派』が存在した。青城派の若き剣士燕小六は付近の村で行なわれた果し合いの代理人として相手を殺すことなく勝利したその翌日、師により名を『燕横』に改められ、『道伝弟子』(注:弟子の身分だが他の弟子に武芸を教えられる立場)に命じられる。
17歳にして『道伝弟子』となった燕小六は喜びに打ち震えたが、その一方で武力で他者を負かし、助けた弱者から報酬を受け取る自分たち武術家が巷にいるゴロツキと一体何が違うのかと苦悩した。
しかし青城山の平穏は突如として破られる。湖広(注:湖北・湖南省)に本拠地を構える武術集団『武当派』が青城山までやってきたのだ。全員武器を帯びており、明らかに挨拶をしに来ただけとは見えない。身構える青城派の面々に対して武当派の代表は、青城派は今後巴蜀無双ではなく天下無双を名乗るように告げる。だがそれは天下無双を掲げる武当派に服従し、傘下に入ることを命じる屈辱の通告だった。
人生全てを武に捧げる『武道狂』の称号は主人公側よりも敵役の武当派の連中にこそふさわしい。そもそもこの武当派は邪教集団を壊滅させて名を挙げた筋金入りの武闘派で、その修業は死人が出るほどの過酷さで知られていた。天下無双を目指す彼らの思想は同じ武人の青城派にすら理解されない。
この武当派が勝つためには手段を選ばない暴力集団ならばただの悪党に過ぎないが、彼らは闘いで卑怯な手を使うわけでもなく、自らの嗜虐心を満たすために弱者を虐げるような下衆な人格を有しているわけでもない。彼らは組織が掲げる天下無敵の夢を実現するために他流派に命がけの戦いを挑み、後顧の憂いをなくすために相手を皆殺しにするという、武人として極めて純粋な存在である。
武侠小説をイメージしか知らない人間にとって、武当派こそ武侠小説の正統派主人公に見えなくもない。そこで武道家のあり方に疑問を持ちながらも戦い続けることを選んだ燕小六を対照的な存在に置くことで、『武道狂』のもう一つの姿を提示している。
果たして燕小六は武当派と同じく、相手を打ち倒すことしか眼中にない『武道狂』となってしまうのか。彼の選んだ道には同門の親友との悲劇的な再会も約束されている。本書はシリーズ物としては非常に良くできた構成で、まるで大プッシュされている少年漫画の新連載作品を読んでいるようだった。
実際に本作品は既に漫画化もされているが、緊迫感のある戦いを上手に描けている。
ところで本書の日本語読みは
『ぶどうきょうのうた』
でいいのだろうか。
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