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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
41
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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 『未来形小説』こと人形軟件3部作の2作目。
 
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 1作目の霊魂上載で自分と同じ人形軟件に命を狙われた主人公の『我』はネット世界から現実世界へ活路を見出し、日本人ハッカーアマテラスの力を借りて機械の体に自分自身をアップロードすることに成功する。本作生死之輪では舞台を現実の日本に移してロボットとなった『我』が相変わらず正体不明の組織に命を狙われます。しかも前作で協力してくれたアマテラスにも危険が及んでおり、『我』を助けに行くことが出来ない。
 
 ネットワークを駆使して世界中の仮想空間を行き来できる人形軟件の設定を活かした前作の逃亡劇に比べて、追うものと追われるもの双方が行動に制限のある現実世界でのそれは、『我』たちと『我』たちの心理を通じて読者が肉体に覚える恐怖はヴァーチャルとは比較にならないほど大きいのに、物語の規模が随分縮小して見えてしまった。

 しかし機械の体を持った『我』がネット空間とはまるっきり異なる環境にそれこそ命がけで順応していく様子と、頭を使って追跡者を出し抜いていく展開には胸を熱くさせられる。また、『我』以外の現実世界へ脱出した別の人形軟件が出てくるのも見所だろう。
 


 
 本作では人形軟件のデータを現実世界のロボットにアップロードさせようとする組織が現れる。

 このシリーズで重要な位置づけを占める人形軟件とはネットワーク上で生活するもう一人の自分のことだ。しかし主人不在で自立できる人形軟件を造るには労力と資金が必要になり、またそうして出来た人形軟件でも現実世界のロボットに移植させるのは至難の業だ。『我』も成功の確率を上げるために自己を増殖させる村上春樹ウイルスに自ら罹ることで辛くもアップロードができた。だからこそ成功例である『我』がまたしても狙われる対象となったわけだ。
 

 本作では『我』とアマテラスの関係が恋人同士のように描かれているが、人間と機械の境界線とか両者の間に愛は成立するかなどの答えの出ない問いは出てきていない。しかし『我』もアマテラスもお互いを愛しく思い、好きだからという理由で自らの命を危険に晒しながら彼(彼女)を助けに向かう。だが彼らの感情を後押ししているのは、前作で自分を助けてくれたアマテラスへの恩と『我』が備えている男としての義務感であり、機械となった『我』に対する後ろめたさと人間としてのアマテラスの責任感だ。引け目があるから彼らの仲は恋愛にまで発展しない。
 
 もしラストで『我』とアマテラスが出会えていたならば、この作品は読者にどのような質問を投げかけていただろうか。その答えはきっとまだ執筆中のシリーズ最終作に描かれているはずだ。

 
 この小説の帯には作者譚剣のこのような言葉が書かれている。
 
 「我不写科幻本身、我写科幻世界中的真実人性」
 (私が書いているのはSFではなく、SF世界の中の本当のヒューマニズムだ)
 
 
 今後有り得そうな少しだけ先の未来を舞台に現代とは変わらぬ人間たちを描いているから、本書はSF小説ではなく未来形小説という括りなのだろう。
 

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