2015年中国懸疑小説精選 編者:華斯比
評論家・華斯比が掲載誌の垣根を超えて2015年に発表された中国懸疑小説を厳選した短編小説集作品集。序文では中国大陸の懸疑小説及び推理小説に関する現状等を説明しており読む価値がある。またその中で『推理之門』の管理人・老蔡の意見に賛同し中国の懸疑小説とは広義の推理小説だと定義している。そして彼自身の解釈として、広義の懸疑小説とは『謎』に対する答えを主に描いている小説と定めているので本書に収録されている作品には特に凝ったトリックが用意されていない。
(ちなみに2015年中国偵探推理小説精選という本もあるが編者が違う。)
本書に収録されている作品内容をあらすじや作者説明とともにここに書き記します。
西巴斯貝之恋/高普
近未来的な社会で探偵業のような仕事を請け負っている男がある女性から行方不明の娘を探すように頼まれる。SFものかとおもいきや物語が進行していく中で登場人物たちの正体が明らかになるが、むしろ正体を理解していないと話がいまいちわからない。物語の全貌を読者にわからせる見せ方が非常に上手い。
作者の高普は台湾人。本作は「第7回台湾推理作家協会征文賞」の最終候補まで残った作品らしい。
瀕死的女人/時晨
とある女性が語った臨死体験の地獄の風景から殺人事件の発生を察知し、彼女が現在危険な状況にあると知った名探偵の陳爝がワトソン役の韓晋とともに彼女が入院している病院へ行き調査を行うと案の定そこの看護師の死体が見つかるという話。このような、一見無関係な話から事件を連想する人間って勘が鋭いっていう次元じゃなく頭おかしいんじゃないかと思う。
作者の時晨は中国では数少ない本格派、代表作に『黒曜館事件』がある。
石陽諜影/何慕
時代は後漢の建安二十一年、蜀からやってきたスパイの劉晨は捕まる前に魏の重要機密を盗み、既に送り出したと言い残して自殺した。石陽県城の都尉である賈逸は劉晨が一体誰に情報を渡したのかを探り、国外流出を防がなければいけない。
時代を1900年代にすれば反特小説になりそうな内容。
玫瑰花的葬礼/原暁
とある社長令嬢の関係人物の女性たちが次々と不幸な事件、事故に巻き込まれていく。その犯人とは社長令嬢の執事であり、女性たちは彼に誘拐されていただけで無事だった。事件は社長令嬢のために暴走した執事の独断行動だと判断されたが、誘拐された女性たちに異変が起きる。
八宝簪/E伯爵
宋の時代を舞台にした首なし死体をめぐるサスペンス。首なし死体が出てくる話では死体をどのように活用するかがポイントだが、ここでも死体の首が、厳密に言うと首の一部が事件を混乱させている。
極度懐疑/何許人
とある舞台に連れてこられた八人の男女はピエロの命令のもとに命がけで自分たちがここに集められた理由を探し出そうとするが、タイムアップを迎えて一人ずつ殺されていく。なんかどっかで見たような展開で陳腐に思えた。
作者の何許人は詐欺師の小説『老千』シリーズを書いており、昔本を贈ってもらったことがある。
孤女太妃糖/豆沙飯団
自分の娘が再婚相手と共謀した犯罪に気付いているのではないかという母親の恐怖を描いた一作。成長して知恵を付けてきた娘を疎ましく思う両親と真相に迫りながらも知らない振りをして無垢な子供であることを見せる娘のやり取りが非常に面白い。
欺詐之狐/軒弦
名探偵・慕容思炫が最後にいいとこ取りをする作品。善人は騙さない『クロサギ』みたいな詐欺師の陳究風が手練手管を弄して一筋縄ではいかない詐欺師相手と騙し合いの応酬をする。
来自徳瑪西亜的死亡遺言/亮亮
最後は亮亮の『把自己推理成凶手的名偵探』から一篇選ばれている。事件に遭遇する度に誤認逮捕される迷探偵・狄元芳が雪山の山荘という絶好のシチュエーションで殺人事件に巻き込まれ、やっぱり逮捕される。女子中学生探偵羅小梅は今度も彼を冤罪から救えるのだろうか。
以上9篇が収録されているわけだが、各作品に初出や作者の簡単な紹介が載っているのが嬉しい。
不満点といえば序文は『2015台湾推理作家協会会訊』に掲載されたコラムを加筆修正して転載している?だけなので、結局収録作品がどのような判断基準で選ばれたのかその理由が書かれていなかったことだ。
会社が解散して2日経った時点での私の諸感想を述べます。
満足した点
・補償金。
強いて言えば、です。だって他は全部不満点なんですから無理やりいいところ見つけないといけないじゃないですか。
中国の『労働法』によると会社は勤続年数に応じて社員に『経済補償金』を支払う義務があり、社員は勤続年数1年につき1ヶ月分の給料に当たる金額が補償されます。これは『労働法』に定められた当然の義務ですが、今回の会社解散に当たって26日当日に経済補償金の合意にサインをした社員には経済補償金とは別に額外経済補償金として1ヶ月分の給料と特別費用が支払われることになりました。
実は私はこの『経済補償金』が定める給料が日本人の私にはどう適用されるのか不安で全然もらえないんじゃないかと思っていました。ところが予想以上に貰えることが決まったので「まあこれで良いか」と妥協して合意書にサインしました。
だから正確に言うと「満足した点」ではなく「安心した点」です。金では会社が解散したという重大な事態を突然背負わされた人間を満足させられません。
不満点
・突然過ぎる。
この一言に尽きる。当日解散という会社の裏切りはどうしても納得できない。社員に不意打ち食らわせて自分たちは弁護士まで用意しているという会社側と比べ、社員側は心の準備もできておらず十分に考える時間も社員同士相談する時間も与えられなかった。もし一ヶ月、いや一週間前にでも解散の通知があれば社員側も何らかの準備はできたわけで、例えば私の友人に去年会社が解散して現在は北京の他の会社に勤めている日本人(以下、元失業姉貴と言う)がいるのですが、私の場合はその先輩に話を聞くことだってできましたし、今回の件をTwitterに投稿したところいろんなアドバイスを貰えたので、それを事前にできたかもしれなかったわけです。
そして元失業姉貴の会社は二ヶ月前に解散の通知があり、北京から撤退した某日系大企業も一ヶ月前には通知があったということですから、当日通知の当日解散が如何に異常だったかということがわかります。
・顧客や取引先に挨拶する権利すら与えられていない。
出社した時点で会社のメールが既に使用不可能になっていたため外部と連絡が取れなくなっていたのですが、昼過ぎに取引先から「お前の会社が解散するっていうメールを貰ったんだけどどうなっているんだ?」という電話がありました。話を聞くと、どうやら会社が顧客や取引先へ会社解散のメールを送っていたようなのですが社員の我々はそのメールが出されたことすら知りません。会社都合で当日解散させられて、我々社員はお世話になったお客さんに挨拶一つすることすら許されていなかったのです。
・結局まともな説明を受けていない。
朝に質疑応答の時間が設けられましたが不意打ちめいた解散劇に誰も反応できず、結局何で当日解散をするに至ったか説明を受けていません。業績が悪かったから会社を閉めるということは理解できます。でもそれは当日決まったわけではないわけで、だからこそ会社側は日本から取締役が来て法律事務所の弁護士も呼べているのです。
今振り返ると解散の予兆はありました。人手不足のピークを迎えた今年2月の春節明けまでは新人募集をかけて面接を受けていたのですが、それ以降は全く面接の予定を入れていなかったのです。毎日部長が慌ただしく外出していたので単に時間が合わないんだろうと仕方なく思っていましたが実際は法律事務所に行ったり解散の手続きをしていたんでしょうかね。
面接をしなくなった時期が会社解散の決まった日と考えられますが、とは言えカモフラージュの可能性もあるので部長がいつ本社から解散の指示を受けたのかは謎です。
・騙されていたことへの憤り。
百歩譲って平社員に秘密にしていたのは仕方ないとして、中国人のマネージャーにも知らせなかったというのは今まで一緒に長く仕事をしてきた人間に対する処置なのかなあと悲しくなります。
解散を事前に知っていたのは本社から派遣されている日本人の部長と日本人のマネージャーの二人だけ。だから社員の一人なんか26日当日は有給取って旦那さんと旅行に行っていたので旅行先で解散を知るという天国から地獄への落下を体験させられました。
上述の元失業姉貴は会社からの慰労として本社から日本旅行兼本社研修に招待され、その旅行の道中で本社の社長から北京支社がなくなるという情報をいち早くゲットしたことがありますが、うちの社員の場合は北京に戻ってきた時にはもう会社はないわけです。
終わりに
Twitterで「取締役を人質に取って賃金交渉をしよう」という過激なアドバイスを頂きましたが、もし仮に解散の日に社員の反乱が起きてそういう事態になったとき日本人である私はどうすれば良いのか考えました。
私は本社とは全く無関係の現地採用者であって会社で唯一の日本人平社員でした。今回の解散劇でも中国人社員と同様に頭を抱え、本社の決定を恨みました。かと言って暴動には賛成できないのですが万が一起きた場合私一人では止められないでしょう。そしたら止められなかった私は罪に問われるのでしょうか。
そう思うと、今回会社が当日解散を選んだのは社員の団結や反乱を恐れたからだという考えもできます。社員数は少ないし男性より女性社員の方が多い職場ですがないとは言えません。思い返せば解散を告げた朝は部長と取締役の他に5名以上の男性が会社に来ていたわけですが、それは暴動等の事態に対応するための人員だったかもしれません。また日本人マネージャーが来ていなかったのも社員に糾弾されることを避けるため、説明会を会社ではなく別の場所で社員1名ずつ行ったのも社員が同じ場所に集まることを防ぐためだったのかもしれません。
穿ち過ぎじゃないかと思いますが当日解散という手酷い裏切りに受けた人間にとって本社のやることなすこと全て社員の不利になるよう仕組まれていたのではと疑心暗鬼になるのも仕方ないでしょう。今となっては部長の疲労困憊した顔すらも社員に同情心を起こすための偽装だったんじゃないかと思ってしまいます。
今回の件で本社が失うものなんか金ぐらいしかないです。信用なんかもうゼロだから、仮に今後元社員が本社の悪評を喧伝したところで既に中国を市場としていない本社にとって痛くも痒くもないでしょう。「立つ鳥跡を濁さず」と言いますが大半の鳥にとって自分が去った後の水場がどんだけ濁ろうが気にしません。
中国において日系企業を取り巻く環境は好転の兆しを見せず、円安やら人件費の高騰やらチャイナリスクやら様々な要素により日系企業が圧迫されています。中国市場から無事に撤退できる保証もなく、撤退に際して社員側との交渉がこじれてトラブルになったというニュースも聞きます。
しかるにうちの会社は社員に事前に解散を通知することと当日解散することのどちらがよりリスキーかを考えて当日解散を選んだのでしょう。
本社の気持ちも理解できなくはないですが、まさか自分の会社は万が一撤退ということになっても誠意を持って対応してくれるだろうと思っていただけに、今回の件は非常にショックであり、解散があまりにも突然だったため日が経つに連れて怒りがこみ上げています。