この前、のDokutaさんがコメント欄で杜撰という推理作家の最新作『時之悲』を教えてくれた。
だが予想通り本屋に行っても見つからない。北京で最も書籍数が多いだろう王府井書店に行っても置いていないのだ。
歳月推理系の雑誌を出している出版社は書店への影響力がまだないようで、雑誌は道端のキオスクぐらいでしか見つけることができない。そして買うタイミングを逃したら最後、注文以外で購買できない。
杜撰の本にはもとから期待していなかったので、ほかの本を探すことにした。さすが大きいだけあって面白そうな本を購入することが出来た。
ウルトラジャンプで子不語という漫画を描いている中国人漫画家 夏達が、《漫客 絵心》という雑誌で連載していたエッセイ漫画?哥斯拉不説話。
書店の目立たない場所が漫画コーナーになっていて、そこに著者の『子不語』中国語訳版と一緒に平積みに並べられていた。
同級生に哥斯拉と呼ばれる内気な少女が学校で落ち込んでいたり、友達と些細なことで笑い合ったりしている様子が一枚ずつ風景画のように載っているエッセイ漫画。漫画ではあるがコマ割もなければ台詞の吹き出しすらないページが多いので、エッセイイラストと言うべきかも知れない。
この漫画、主要登場人物が数人いるようだが取り立てて紹介もないので人物の相関図がいまいちわからない。漫画も時系列がバラバラの展開で、台詞もなく話が進行するので、全体的によくわからない内容になっており、作品世界にうまく導入できない。
百度で調べると、どうやら編集部のミスで連載時にあった台詞が大量に抜けてしまっているらしい。考えられないミスだ。
そして更に奇妙なのは単行本の前半部が何故かカレンダーになっており、後半部はアドレス帳、夏達の漫画教室、中国と東京のアニメ・同人マップなるものが収録されている。
意図がいまひとつ掴めないエッセイ漫画であるが、いじめられているわけでもなく、友達もちゃんといて、頼りになる人物もいる少女がちょっとした出来事で急激に変化する心象風景が水彩画という柔らかいタッチで大げさなほど表現されている。疲れているときに読むとホッとする本だ。
しかし、何故主人公が哥斯拉なんて呼ばれるのか…日本語で言うとゴジラだぞ。
二冊目はご存知潜入ルポライター李幺傻の暗訪十年 シリーズ3。今回は盗掘集団のアジトに潜入している。
シリーズ1の決死の脱出劇を読んだときから内容に胡散臭さを感じてはいたが、シリーズ2で潜伏中に安宿で一緒に住んでいた奴が今じゃ超有名な芸術家になっている、という記載を読みこの本って実は壮大な冒険小説なんじゃないのかという不信感がいっそう濃くなった。
あとは林斯諺の氷鏡床殺人事件と江暁雯の紅楼夢殺人事件。
どちらも昨年の島田荘司推理小説賞にエントリーされた作品だ。特筆すべきは江暁雯の紅楼夢殺人事件が、台湾組優勢の選考会の中で唯一残った中国大陸出身作家のものだということ。
いま読んでいる林斯諺の雨夜床謀殺案を読み終えたらとりかかりたいと思う。
しかし、毎度のことながら本屋で中国の推理小説を探すのに苦労させられる。大手書店すらもいまだに推理小説をホラーやサスペンスなどと同じ本棚に入れて、コーナーを作って分類していない光景にミステリ後進国の現実を見る。