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 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

巨嬰国 著:武志紅

 

本書『巨嬰国』(巨大な赤ん坊の国)は心理学者の武志紅が著して2016年に出版された本で、今年2月あたりにネットショップを含む書店から撤去されました。とは言え探せば出て来るので、私はタオバオというショッピングサイトで著者の名前を検索した結果見つけることができました。(本のタイトルの場合、検索しても検索結果が表示されない)

 

タイトルの『巨嬰国』とは現代中国のことを指しています。著者の武志紅は中国人の集団心理が生後半年程度の赤ん坊のものであると分析し、『中国は巨大な赤ん坊の国』だという定義のもとに中国人の国民性を述べています。

 

400ページを超える本書は全7章で構成されており、それぞれ以下のように分かれています。

我々の集団は嬰児期で止まっている

巨大な赤ん坊の心理:共生

中国的いい人

我々はみな万能感を持つナルシストの龍である

孝行とは服従だ

返事がないという窮地

龍から人へ

 

 

中国で転倒した老人を助けた人があろうことかその老人から「お前が転ばせたんだろ」と難癖をつけられて金を要求され、裁判にまで発展した通称「彭宇事件」(参考:http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100113/212150/)は日本でも話題になりました。

 

武志紅はこの現象が赤ん坊の行動であると本書の冒頭に書いています。赤ん坊が泣いているときにその原因を他人に求めるのと同様、中国人も上記の老人のように自分に不利な状況に陥ったとき周囲が悪いと思い込み、他人を攻撃するのです。これを武志紅は『巨嬰』(巨大な赤ん坊)と呼んでいます。

そして中国の家庭のいびつさを例に出し、一般家庭は極度に披露した母親、存在感のない父親、問題のある子どもによって形成されていると指摘します。親は自分がかなえられなかった夢を無理やりにでも子どもに背負わせ、子どもは親に甘えながらも親に服従を強いられるという共生状態が生まれ、それが後代に続いていくのです。また、武志紅は自身の経験もあってか『孝道』(親孝行の道)を蛇蝎の如く恨んでいて、中国の伝統的な美徳であるそれを捨てろと唱えます。

 

 



言っていることがなかなか過激で反感を買いそうな物言いです。本書に猛烈に反対する人間の一人に郭松民というゴリゴリの共産党賛同者がいるというだけで、一体この本が誰の癇に障って発禁処分を受けたか容易に想像できます。

http://www.haijiangzx.com/2017/0401/1742086.shtml

(書の序文からの抜粋とは言え、文章の冒頭に武志紅は以前うつ病にかかり、母親もまたうつ病患者であるとわざわざ書いているところが本当に下劣だ。病人の書いた本だから信用する価値ナシと言いたいのだろう)

 

 

本書のキーワードである『巨嬰』とはわがままで、何でも思い通りにできるという万能感を持っていて、ナルシストで、まぁ一言でいえば赤ん坊なのですが、他人を苦しめる一方で自らもその特徴に苦しめられ、嫌なことがあると人にあたり、人にあたれない人間は自分を責め、どんどんと自分を追い込むという特徴を持っています。

 

本書には『巨嬰』の例がいくつも出て来て、それがこの本をくどくて読み飽きる内容に仕上げているのですが、いくつかの例を見て思ったのは『巨嬰』とは結局親離れできないマザコンに過ぎないのでは?ということです。そんなのだったら中国に限らずどこにだっていると思うのですが、武志紅は国外の例と具体的な比較をあまりしないので『巨嬰』とは本当に中国特有のものなのかいまいち理解できませんでした。

しかし武志紅いわく、中国の場合は『孝道』が子どもを束縛し、親が子どもの自立を邪魔し、子どもを傷つけるのです。

 

 

『孝道』を捨てろと言う武志紅の主張は魯迅と似ています。武志紅は『二十四孝』に書かれている通り『孝道』とは中国の伝統的な美徳であるが、親孝行とは親への服従であり子どもを苦しめるもので、ひいては家族全員の首を絞めることになると指摘します。

『孝道』は『二十四孝』を例に挙げずとも現代中国で多くの例が散見しています。例えば2016年にある村が洪水に襲われたとき、ある男は妻と子どもよりも先に母親を助けに行ったところ、自力で生還した妻から離婚を言い渡されました。これはまさに「母親と恋人 どちらを助けるか?」というハンター試験にも採用された有名な命題通りです。母親を助けたが恋人も助かって万々歳、とはなりません。家庭においても妻より自分の母親を優先する男は妻に嫌われてしまうでしょう。しかし中国は『孝道』のせいで、子どもは親の言うことを聞くべきであり、子どもが命令を聞くのは当たり前だと親自身もそう思っているのです。その結果、家庭では血の繋がらない妻が孤立し辛い目に遭います。

 

武志紅は決して「親孝行をするな」とは言っていません。ただ、老い先短い親を守るために我が身や我が子を犠牲にすることの馬鹿馬鹿しさを訴えています。中国で剰男、剰女(結婚しない男女)の存在がもう定着しましたが、『孝道』から考えると親が子どもに結婚を促すのは子どもの幸せを祈っているのではなく、自分の老後を心配しているだけに過ぎません。結婚しなければいけないという行き過ぎた『孝道』が人身売買などにも発展するのです。

 

 

本書は『巨嬰国』というあまりにも目立ち、そして感情を湧きあがらせるタイトルばかりがクローズアップされ、またその内容も「中国は巨大な赤ん坊であり欧米と比べて未熟だ」という中国批判ですのでネットでは多くの毀誉褒貶にさらされました。SNSドウバンにも大量のレビューが書き込まれたのですがいかんせん撤去後にそのページも削除されたようで見ることができません。私は『巨嬰国』を批判している人々が『孝道』についてどう思っているのか知りたいです。武志紅の『孝道』を捨て親から離れて自立しろという主張は全く間違っていないように見えますが、批判者はみな中国の伝統文化をないがしろにしていると言うだけで論理的な反論をしていないように見えるのです。

 

 

 

 

本書は400ページ以上の分厚さで同じような内容が何度も繰り返し書かれているので読んでて何度も飽きが来ました。そんな大作にも関わらず、『孝道』や『巨嬰』という観点から一般家庭や伝統を分析するだけで、もう一歩踏み込んだ政治や外交の分析を全くしていないことに物足りなさを覚えます。しかしこれぞまさに本書が撤去された理由なのではないでしょうか。今まで撤去の具体的な理由は明らかになっていません。ネットに回っている撤去通知書を読みましたが、「因質量不合格」(品質不合格によるもの)としか書かれていないのです。

『巨嬰』という観点から政治を分析され、また他国からもそう評価されるされることを嫌った当局が本書を撤去処分したのではないでしょうか。


 何しろ中国人の大部分は巨大な赤ん坊であるという
武志紅の意見に基づけば共産党員もそれに当てはまるわけで、「中国は何故このような外交を行うのか。それは政治家が巨大な赤ん坊だからである」という理屈も成り立つわけです。もちろんそんなこと書いたら撤去以前にそもそも出版されないでしょうけど。

 

魯迅以来の『孝道』への批判と、中国人の国民性を言い表した『巨嬰』という言葉に出会えたのは収穫でしたが、本書を読んで中国人の国民性を知った気には到底なれません。また、政治的な分析の記述が全くないので日本語に翻訳したところで『嫌中本』にもなれず売れないと思います。400ページ以上あるので見出しを見て興味が沸いたところだけ読めばいいです。

 

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