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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
35
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

 


Dokuta 松川良宏氏がTwitterで取り上げていた書籍の中国語訳版だ。著者のクラリッサゴエナワン氏はシンガポール人。本書はアメリカで今年3月に発刊され、中国では今年6月に出版されている。中国語の他にフランス語やドイツ語やスペイン語など多言語に翻訳されているようだが、日本語版が出るかは不明だ。またミステリーと言えるのかも分からない。


 


 





1994年の夏、慶応大学の院生(?)石田廉は7年間も会っていない姉の石田恵子が殺害された知らせを受ける。廉は姉が生前暮らしていた赤川という土地に行き、姉の職場(塾)に行って英語教師だった姉の仕事を引き継ぎ、姉が間借りしていた家に同じように住み、姉の生活をなぞるようにして彼女の痕跡をたどる。廉は東京と赤川を往復し、夢の中に出てくる姉やポニーテールの少女、自分に好意を寄せる塾の生徒、昔の悪友や元カノらと出会ううちに、姉の死の真相や自分も知らなかった姉の過去が明らかになっていく。






中国語版で帯文に「村上春樹に引けを取らない作風」と書かれていて、英語版のレビューでも「村上春樹云々」とある通り、確かに「村上春樹」っぽい作品だ。具体的にどこかと言うと、主人公の石田廉がクール系で女性にモテて言動に孤独感を帯びている点。現実と非現実の境目が曖昧で、幻覚や幽霊が出てきて、それが石田廉の指針になる点。本筋(姉の死)とは直接関係のないストーリーに進展する点。「姉の死」という重大事を口実に知らない土地で「自分探し」をしている点(舞台が1990年代なのも一役買っている)などである。

 おそらく村上春樹読者が読んでくれたらより村上春樹との関連性をはっきりさせられるのだろう。



ちょっと不思議な日本人名


 


中国語版なので人名も地名も固有名詞は全て漢字表記になっている。石田廉とか石田恵子などの漢字の人名地名はみな中国語版の表記を流用した。この漢字表記が翻訳者の判断なのか、作者の意図が含まれているのか分からないが、ちょっと不思議な表記がいくつかあったのでここで紹介したい。


 


愛比 アイビー?外国人?しかし中国語でこの表記はあまり見掛けない。


加藤小衫 コソデ? KKというイニシャルが出ているのでカ行で始まる名前らしい。


勝美達 スミダの音訳。本来は住田とか隅田とかにするべきだろう。


中島柚木 ユキやユヅキ?名前というか名字っぽい。


青木 石田廉の東京にいる彼女。なぜ名字なのか。


 


 


村上春樹っぽい作品を敢えて和訳して日本で出版する意味はなさそうだが、もしそうなった場合は村上春樹を意識した日本語訳を是非ともやってほしいものだ。


  


ちなみに、中島柚木に恋人はいるかと聞かれた石田廉が「僕も彼氏はいないよ」と答えて、柚木に真面目に答えろと言われた後に「とても真面目だよ。僕に彼氏はいない」って言うシーンは最高に村上春樹だと思った(無根拠)。

以降ネタバレ 





 本作が村上春樹より良心的(だと思う)なのは伏線を放ったらかしにせず姉を殺した犯人がちゃんと判明することだろうが、その犯人の始末が作中の人物たちの手に委ねられていない点は村上春樹っぽい。ちなみに私は村上春樹を23作品しか読んだことがないので、熱心な読者が読めばより具体的な村上春樹っぽさを感じるだろう。

 


 


姉の死の謎を追うという本筋があるが、作品はそれに引っ張られることなく、クールで他人(特に女性から)に愛される石田廉の私生活面を赤裸々に描き、生徒とのデート、元カノとの思い出、悪友とのナンパなどなど下半身事情を中心にして彼の過去やキャラクターがどんどん掘り下げられ、そのお返しとばかりに、石田廉が姉を含む他人の秘密を次々暴露する。


 


 


赤川にやって来た石田廉は姉がいた場所にすっぽり入り、姉と関わりがあった人々と交流し、石田恵子ではなく石田廉として彼らから求められていくが石田廉から孤独の影は消えない。東京に恋人がいて、友人も多く、赤川で新しい出会いがあった石田廉が持つ空虚さの正体は彼個人によるものか1990年代という時代性によるものかは分からないが、姉の後釜にすぐになれたように、周囲の環境や他人に執着しないのが原因かもしれない。しかし、ある人物が言った「赤川にはこの土地で生まれた人間じゃないと居つけない」の言葉通り、彼の孤独感や空虚感は赤川では埋められず、結局東京のある人物のところに戻ろうとし、彼の旅は終わる。


 


そもそも、姉弟とは言え7年間顔も合わせていなかった人間が死んだところで、胸に穴は開かないし、その死の謎を解決したところで穴は塞がらない。この赤川の旅は単なる自分探しに過ぎないのかもしれない。


 シンガポール人が1990年代の日本を舞台に英語で村上春樹風の小説を書いたという事実をどう受け止めるべきなのか、本書を読んだだけではよく分からなかった。村上春樹の再現と捉えれば良いのだろうか。これが日本人が書いたものなら失笑ものかも知れないが、単なる村上春樹の二番煎じとは思いたくもない。この本の和訳は、私を含めた日本人に対して本書の魅力を一層明確に見せることと、結局村上春樹のフォロワーに過ぎなかったと思われかねない「諸刃の剣」になるかもしれない。


 


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