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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
34
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
 
 偵探(探偵の意味)なんて言葉がタイトルに付いているからと言って一般的な推理小説を期待してはいけない。特に中国においては帯文や表紙の言葉を額面通りに受け取ると痛い目に見る。

 pingguozhentan

 中国アマゾン:苹果偵探社之詭秘案件

 ちなみに本書の表紙裏にはこう書かれている。
 
 
 1人は元刑事
 もう1人は大企業の董事長
 誰かが言った。彼らは中国のホームズとワトソンだ、と。
 


 出版社は探偵役と助手役がいる作品が全て古典を踏襲していると思わないでいただきたい。
 

 本書は6つの短編から成り立っている。
 
 主人公でワトソン役の李忠は大企業の董事長という大変偉い人物だったが、とある事件で敏腕刑事の林立に助けられてから彼を引き抜き、二人でアップル探偵社という会社を作ってしまう。
 

 1話目の【眩】はそのプロローグとも言うべき物語だ。
 

 ある晩李忠は奇妙な女を見かけた。蠱惑的な魅力を放つ女は高笑いを上げながら病院に入っていく。しかしそこは李忠の重病の父親が入院する病院だった。訝しむ李忠の目の前でその奇妙な女は父親の呼吸器を外し、彼を殺す。更に女は李忠を弄ぶように友人の子供、果ては見ず知らずの妊婦を残酷な手口で殺していく。そして凶行は李忠の妻にも及び…


 悪夢のような惨劇から一転して李忠は病院のベッドにいた。目の前には身に傷一つない妻と刑事の林立がいる。2人から父親が何者かに殺されたことを知らされた李忠はその奇妙な女のことを証言し他にも殺された者がいると訴えるが、父親の事件以外何も起こっていないと言われる。
 夢とも現実ともつかない惨たらしい殺人シーンを立て続けに見せられた挙句、警察に殺人事件の存在を否定された李忠を支える精神は徐々に崩壊していく。
 

 すんでのところで精神病院入りになる李忠が林立の名推理によって助けられる本作は、本書の方向性を読者に指し示す重要な一篇と言えるだろう。まさか李忠が見た惨劇の全ては幻覚剤マネキンによって作られていたとは、普通のミステリを読んでいると思っていた読者への不意打ちとなった。
 
 
 しかし2話目の【韋村怪事】はプロローグ以上の衝撃作だった。
 


 
 既に董事長の職を辞した李忠はリハビリを兼ねて旅行に出かけ、『韋村』という名の村に泊まることになる。そこで全身目玉だらけの人間の死体を発見した彼は林立を呼び、祟りがあると古くから村で恐れられている古墳を調査する。
 

 都市部を舞台にした1話目とは異なり山村の因習や目玉だらけの人間など伝奇的なストーリーになっているが、オチの突拍子のなさは1話目以上だろう。
 

 何せ犯人が古墳の中で移植手術の人体実験をするマッドサイエンティストだからだ。
 

 自らも自身の細胞を培養した首を移植し双頭となっている成業博士の研究成果は全身に目玉を移植した男、発声器官を備えた唇が全身に張り付いた男、ちゃんと母乳を出す胸を6つも付けた女だ。女は豚の精子が受精させられており、お腹が大きくなっている。
 そっち系の趣味を持つ人にしたら是非とも映像化してもらいたい地獄絵図だ。
 


 人を人とも思わない非人道的な人体実験を繰り返す成業博士は本書最高のキャラクターである。
 1話目を読んで本書がミステリではなくサスペンスだと思い知らせた読者に間髪入れず変態ホラーをぶつけるという構成や、全編を通して後味の悪い終わり方に作者時間の底意地の悪さが透けて見える。

 
 鬼畜にも劣る所業を目の当たりにし怒りを燃やす李忠と林立に向かって『お前らの全身を男性器だらけにしてやろう』と言い放つ成業博士を見ると、もうこの本が書店のどのコーナーに置かれていたかなんて気にならない。
 

 チンコもぐぞ!という脅し文句はよく耳にするが、チンコ生やすぞ!はそれにも増して恐ろしい脅迫だ。
 
 

 その他の4作はどれも2話目を凌ぐほどの意外性はない。
 

 【死亡 on line】【残酷的愛】は中国のネットにも氾濫する都市伝説の1つと言われてもおかしくないほどアイディア一辺倒の短編だった。最終作の【金蝴蝶謎案】は少女売春問題を取り上げて現代中国の憂いを書き、物語に幅を持たせてはいるものの、肝心のミステリ部分はわかりきった犯人をわかりきった捜査方法で暴き出しているだけだった。

 一番推理小説らしかったのは【紅桜桃小区殺人事件】だが、李忠が容疑者の身元を調査する手段が百度でググるだけというのが気持ちを萎えさせた。
 
 
 総合的に見れば大したことのない短編集だったが、それでも読む手が止まらなかったのは作者の文章力がなせるわざだろう。
 

 事件の被害者や関係者を作品世界の外へ突き放すかのような救いのない結末や、常人離れした犯罪を解決するほぼ無個性なホームズ役の林立という構造に注目するとミステリに関する作者のこだわりが見えてきそうだ。面白いネタが溜まったらまた続編を書いて欲しい。もちろん、プリズンブレイクした成業博士の再登場を求む。
 

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