忍者ブログ
カレンダー
10 2017/11 12
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
[09/10 まあちゃん]
[08/19 まあちゃん]
[08/19 まあちゃん]
[08/19 阿井]
[08/19 阿井]
プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
34
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
     ★を@に変えてください
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
* Admin * Write * Comment *

*忍者ブログ*[PR]
*
このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

『珈琲館里的驚奇派』(喫茶店の不思議なパーティ)

 

 

苦手な構成だったので個人的には評価が低い、ってか評価を下したくない、でも中国のSNS豆瓣では評価の高い一品。

 

 


鬼節(旧暦の715日。日本のお盆に相当)で何もすることなく家でダラダラしていた周斌、李昂、劉胖子(胖子とはデブの意味)の男3人は友人の楊麗華を誘って麻雀をしようと外出するが、楊麗華もまた友人の白香蘭、趙萱と女3人で遊ぼうとしていた。6人は喫茶店に入り、自分たち6人を登場させる殺人ストーリーを各自で披露して時間を潰すことを思いつく。順番に繰り出されるフィクションの中で殺され続ける6人。一つの話が終わるごとに6人の隠された関係性が明らかとなり、いつしか本物の殺人事件が発生する。


 

 

この話はいわゆる入れ子構造になっていて、作中の6人が即興(?)で創ったストーリーを披露し合い、各話の終わりに幕間が用意されそこで各人がその話の感想を言い合い、徐々に6人の隠された秘密や関係性が浮き彫りになるという展開です。そして中盤以降に6人のうちの1人が殺され、新たに登場した探偵役のキャラクターがフィクションであるはずの6人のストーリーから真実を見つけ出し、犯人を導き出すという安楽椅子探偵的構造を取っています。ストーリーの各話が独立していながらも殺人事件の発生から解決までの要素が一貫して込められていて、決してアンフェアではなく、事件を起こす前の人間の口から語られるフィクションに犯罪の証拠があるという作品です。

 

 

豆瓣でも高い評価を得ている本書のどこに不満があるかといえば、それは根本的に本書の構造にあります。長編小説が読みたくて買ったのに、なぜ作中で素人が創ったという体裁の短編小説を読まされなければならないのか。
 
 以前も赤蝶飛飛の『九度空間』という小説が、有名小説家の残した短編を聞きながら話の大筋が進むというもので、とりわけ面白くもない短編を作中の人物が「素晴らしい」と褒めまくる展開に辟易させられたものです。

 

それに比べると本書では作中人物に「また俺が被害者か!」とか「私のキャラがおかしい!」とか批判させているのでまだマシかと思います。(もちろんその設定は後半起こる殺人事件のために付けられたもの)

 

とは言え、昨今の中国ミステリ界隈では短編小説集が出しにくいと言われている、長編小説の方が版権を買われて映像化しやすい、などの状況を見てみると、長編小説を書く体力と構成力がない作者が書き溜めていた短編小説に手を加えてこういう入れ子構造の本を書いたのではないかと邪推してしまいます。

 

評価は高いですが個人的には受け付けなかった作品でした。

PR

『氷血:零下30℃的刑偵現場』著:薩蘇

 

 

 

著者の薩蘇は日本在住の軍事史学者で専門は当然日中戦争(抗日戦争)時代。中国では小説家としてより歴史家として有名だそうで、知人の中国人も小説は初めて読むが専門書は大学で読んだと言っていた。

 

8月某日の新刊トークショーで薩蘇「私にとって歴史を書くのも推理を書くのも一緒」と言っていたが、本書を読むと果たしてこれも「推理小説」のジャンルに入れて良いのか疑問が湧いた。

 

本書は短編集だがここに掲載されている事件すべて中国で実際に起こった事件であり、実際の事件をモデルにした創作でもない。著者は、日中戦争従軍者で戦後は公安として主に中国東北部で起きた数多くの事件を担当した老丁という老人から聞いた話を小説仕立てで書いている。

表題作「氷血:零下30℃的刑偵現場(凍れる血:マイナス30℃の捜査現場)」19862月に吉林省で起きた実際の列車爆破事件を扱っており、老丁らをはじめとする捜査関係者の活躍や当時の捜査方法や事件背景などをつぶさに描写している。おそらくそこには多少の誇張はあれども虚偽はないだろう。

 

老丁が語る近代の事件簿は非常に面白い。「西辛荘的『邪門』殺人案(西辛荘の『異常な』殺人事件)」は検視の結果明らかに他殺であるにも関わらず被害者の父親が「事故だ」と主張し、そればかりか他の住民まで「事故だ」と言い張り、ついには被害者の父親が出頭するという有様で、村単位で何かを隠している様子に薄気味悪さを感じさせる。

また「吊死鬼島血案(首吊り島殺人事件)」では冒頭で作者と老丁がテレビを見ていると、日本兵役を演じる日本人俳優が「監督から雪原の中で強姦シーンを演じろと言われたが、あんな寒いところでケツを出してそんなことするヤツいないだろう」という愚痴から物語が始まる。この日本人俳優とはおそらく渋谷天馬のことを言っているだろう。

 抗日ドラマで悪辣な日本兵演じた日本人俳優

ちなみにこの「吊死鬼島」とは敗戦時に日本兵が集団自決した場所らしい。

このように舞台が中国東北部であることから、老丁の語る話には日本軍そのものこそ出てこないが、あちこちに戦争の残滓を感じさせる。

 

 

ただ本書後半部分に掲載されている194050年代の国共内戦による国民党の匪賊との戦いは冗長で読むのに疲れた。これを後半に置いているから恐らく作者が本当に書きたいドキュメントはこっちなのだと思うが、パターンとしては「悪しき国民党の暴徒が勇猛果敢で正義感溢れる共産党に敗れる」しかないのだから、私のような非共産党員にとっては本の中で如何に銃撃戦や知略戦を繰り広げようとも退屈でしかない。

 

中国では195060年代ぐらいに国共内戦を題材にしたミステリ小説ばかり生まれたが、その大半がミステリ小説とは名ばかりの「反特務(反スパイ)小説」ばかりだった。

本当にあった事件を小説化したドキュメンタリーが果たしてミステリ小説なのか。それはただのドキュメンタリーなんじゃないのかと思うが、中国のミステリ小説史を見ると公安や警察や共産党の活躍を描く作品もミステリ小説としてカウントしても良いのかもしれない。

『鴉雀無声:双生鎮殺人事件』 著:段一

 

 

双子ばかりが生まれる資産家一族の住む鎮(村みたいなもの)で連続殺人事件が発生し、外からやって来た探偵が事件を解決するという、横溝正史的な因習や血縁の深いドロドロとした狭い世界を見せてくれるのかと思いきや、非常にライトな新本格へ着陸している。

 


周家の当主・周岳生の義理の弟・葉国立がパーティの最中何者かに殺された。事件当時、周家の家族は全員揃っていたことから外部の人間の犯行が疑われ、またグチャグチャに潰された死体の顔に怨恨の可能性を見る。一向に進展を見せない警察の捜査に業を煮やした周岳生に呼ばれた探偵の段一は周家の双子にまつわる奇怪な伝説を見聞きする。周家では百年以上前から双子ばかり生まれ、双子以外が生まれたら必ず災いが起きるという言い伝えがあったのだ。では今回の事件もその言い伝えと関係があると言うのか。


 

 

言い伝えの他に、敷地内の塔に住んで俗世と隔てた生活をする美少年の周宝文と周宝武や、周岳生の娘・周隽麗の双子の姉で1年前に自殺し存在がタブー視されている周紫英、当主のイトコで不可思議な言動を繰り返す中年双子など明らかに怪しい要素がてんこ盛りで、これからどんな血塗られた過去が明かされるのかとワクワクする。更に「私」というホームレスが登場し、「私」視点で殺人現場を目撃するという展開も待っており、犯人の正体と同じぐらい「私」の正体にも注目が集まる。

 

 

しかし本作には横溝正史や江戸川乱歩的なオカルト要素はなく、古くから続く因習が醸し出す不気味さも全くない。美少年の周宝文と周宝武兄弟は単なる良い子だし、周紫英の自殺はその原因こそ悲惨だが下劣な犯罪に遭った彼女の存在が本作をますます古臭い伝説から遠ざけている。

 

タイトルにまで「双生鎮(双子村)」にしているのだから、ここまで双子三昧にして双子を利用したトリックを書かないのはウソである。その期待に応えて作者はきちんと「双子」を使った入れ替わりトリックを披露している。これは一般的な双子トリックの進化とも派生とも言えるもので、このトリックのために舞台装置が存在している。

 

 

 

ところで中国では小説に「殺人事件」というタイトルを使ってはいけないという不文律があったようだが、この本ではバッチリ使っている。規制が緩くなったのか、それともみんな「不文律」という言葉に怯えていただけでもともと存在しなかったのか。

私の予想では、この本を出版した百花洲文出版社内部のチェックが甘く、また上の検閲も厳しくなかったため「殺人事件」というタイトルが通ったのだと推測する。

真相推理師・幸存 著:呼延雲

 

本書は2011年に出版された『不可能幸存』を2017年に改めて再版したものだ。再版版としては2冊目だが、名探偵呼延雲シリーズでは3作目であるらしい。

 

 


別荘地のKTV(カラオケルーム)で健康グッズ会社『健一』の社長を含めた6人の死体が発見された。現場は鍵のかかった密室、犯人を示す有力な手掛かりは何も見つからない。ただ、現場付近を血まみれの服を着てさまよっていた女性が重要参考人として保護されただけだった。だがその女性が前作『真相推理師・嬗変』で恋人との悲惨な別れを経験した警察官の劉思渺だったことで、警察は何としても彼女の存在を隠そうとする。その一方で、心を閉ざし全く喋ろうとしない彼女から真相を聞くために『名茗館』という探偵組織のリーダーの愛新覚羅・凝に頼み、彼女に逆行催眠をかけて記憶を蘇らせようとする。しかし治療の途中、マスコミと『健一』に劉思渺の存在がバレ、事件の容疑者が警察官だと報道されてしまった。そしてその混乱のさなか、治療を受けていた劉思渺が姿を消す。


 

 本作は主に大きなテーマ(社会問題)と小さなテーマ(密室殺人事件)の二つで構成されていて、新聞記者の郭小芬が大きなテーマである健康グッズ会社の詐欺商法を追いかけるとともに、その取材をしながら犯人がいかにして密室殺人をやり遂げたのかという小さなテーマを解明します。

『黄帝的詛語』で一部の警察官も関与する臓器売買を書いたことでお叱りを受けたこともあり、今回も健康グッズ業界にいかに詐欺行為が蔓延し、何故それらがなくならないのかということを入念な調査が感じられる筆致で、郭小芬を通じて描写しています。

 

しかし社会全体の問題である詐欺商法は現実でも解決されていないのですから郭小芬一人で解決できるはずもなく、彼女は今回も社会問題も殺人事件ももどちらも解決できないまま終わります。しかしそれで彼女の行為が無駄だったということはなく、むしろこのシリーズは彼女がいないと全く成立しません。事件に首を突っ込み、警察とも仲の良く、記者の肩書を活かして誰彼構わず話を聞ける彼女がいなければ、まとまりのないストーリーになっていたことでしょう。

名探偵呼延雲は実力がありますが行動力がない安楽椅子タイプの探偵で、本作でも誰かの電話に出る程度で滅多に姿を現しません。よって本作は、というよりも『名探偵呼延雲シリーズ』は実質郭小芬の物語であります。また作者はもと新聞記者でしたので、作者と同名のキャラクターが主人公である一方、作者と同じ職業のキャラクターもまた作者の特徴を濃く受けている分身とも言えます。

 

 

本作から中国四大ミステリ研究会の一つである『名茗館』の愛新覚羅・凝が登場します。この『名茗館』らミステリ研究会は民間の探偵組織であり、彼ら構成員は独自の手法で警察と協力し、または警察に代わり事件を解決するのですが、中国じゃなくてもこれが非現実的な存在ということはわかるでしょう。現代中国の問題を提起する社会派ミステリでありながらリアリティをガン無視したキャラクターが登場するライトノベルミステリの様相を呈する、これが呼延雲シリーズが中国で『中二』(中二病の意味)と言われるゆえんです。

 

この愛新覚羅・凝ですが、これが単なる歯に衣着せぬ言動で呼延雲ら名探偵の噛ませ犬となる「名探偵(笑)」かと思いきや、初登場の今作で作中屈指の人間の屑であることがわかります。

彼女はある手段である人物を陥れようとするのですが、あまりのやり方に、もしやこいつ表の顔は名探偵だが本当は犯罪組織のメンバーでこうした暗躍で警察の力を下げているんじゃないか、と思いきやその動機は完全に私的なものなのでなおさら始末に負えない。結局返り討ちに遭って思惑もバレてしまったのですが、こいつはなんでこんなことやらかしても新刊(5巻)でもいけしゃあしゃあと登場しているんでしょう。

 

 

知識を蓄えることを信条にしている作家だけあって、大筋のストーリーで健康グッズ詐欺という大半の中国人読者の生活に密着した話題を展開し、トリックに興味のない人でも飽きずに読める読み応えのある内容に仕上げています。

 

 

 

 

 

  

 数学者アルフレト・タルスキの有名な真実定義から取ったタイトルに作者の教養の深さを感じずにはいられない。

 

日本人イラストレーター中村至宏が表紙デザインを担当した本書は外見の時点で他の中国ミステリと一線を画する、陸秋槎お得意の『少女ミステリ』である。前作『元年春之祭-巫女主義殺人事件』では、読者が殺人の罪を問うこともためらわれるほど一途な同性愛的憧憬を見せてくれたが、本作でもタイトルに『雪』と『白』という純潔さを象徴する漢字が使われているように、他人の干渉を全く受けたくない少女の身勝手な愛が描かれている。

 

 


生徒会長の馮露葵と友人の顧千千は5年前に校内で起きた女子高生死亡事件に興味を持つ。ルームメイトたちからイジメを受けていた唐梨という少女がある雪の降る日にイジメ加害者のナイフで自殺を図った、という事件だったがその状況に疑問を覚えた馮露葵は、事件当時在校生であり現在は同校で司書として働いているミステリ好きの姚漱寒の案内で当時の関係者たちに話を聞きに行く。しかし、事情聴取後に学校で5年前と同様の事件が発生する。被害者は校内の問題児であり、イジメの加害者として先日顧千千たちから退学を命じられた呉莞だった。犯人はなぜ5年前の事件を模倣したのか。馮露葵と姚漱寒は事件の解決に動く。


 

 

まず、キャラクター造型が面白い。前作『元年春之祭』では聡明且つ冷酷な少女と平凡で優しい少女が探偵・助手の役割を果たしていたが、今作では一般的な探偵・助手像から脱却し、関係の倒錯した両者が描かれている。主人公の馮露葵は典型的な生徒会長キャラで頭の良い文学少女であるがミステリ小説には暗い。一方、馮露葵の助手として活躍する姚漱寒は一見すると自分が働いている高校の学生よりも幼く見える外見であるが、大人として、そしてミステリ好きとして馮露葵を引っ張っていく。生徒と先生(司書)、クール系年下と明るい年上、大人びた少女と子供っぽい大人の関係が事情聴取の旅を続けるという少女ミステリ好きならたまらない内容だ。

 

 

5年前の唐梨の事件とそれを模倣した現在発生した呉莞の事件は全く同じ雪を利用した密室殺人であるが、そのどちらもトリックそのものに焦点が置かれていないように見える。5年前の事件を解決する手段として馮露葵らは当時のイジメの加害者らに聞き込みに行くが、このようにして話の大部分が「犯人は誰か?」に当てられる。そして模倣事件が起きると、密室や犯人の謎以前に「何故やったのか?」という疑問しか思い浮かばなくなる。

 

2つの事件の謎が動機のみに絞られていき、トリックの内容よりも衝撃を受ける犯罪の理由が犯人の口から語られた時、本作は『少女ミステリ』として完成する。

 

新本格が持っている、人を人とも思わず殺人計画の一部として利用する度の過ぎた残酷さを当然本書も持ってはいるのだが、一般的な殺人犯とは異なる凶器に駆られた本書の犯人には「馬鹿馬鹿しい」と一笑に付せない凄みと美しさがある。また幼い動機であるがゆえに、それは金銭目当てや怨恨など言うに及ばず他のどのような動機よりも純粋に思え、読者はきっと犯人に共感を示すだろう。だが犯人が特別であり、動機が特別だからこそ、それを肯定してはならない。全編に百合的な雰囲気が通じている本作が結局救われない結末で終わってしまうことは、中国における同性愛のタブー性を象徴しているようでもある。

 

是非とも大勢の人に読んでほしい新本格中国ミステリである。

 


Copyright: 栖鄭 椎(すてい しい)。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Material By 御伽草子 / Template by カキゴオリ☆