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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
34
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

 


夏日蛍火 著:謝筠琛
 
 全部読んだけど個人的には合わなかった一冊。


 




高校教師になった関月青は着任早々韓立洋という男子生徒の飛び降り現場に遭遇する。事件、事故、自殺の可能性が考えられるが学校側は放課後に起きたことであり自身に責任はないと主張し、韓立洋の両親は同じように自殺を否定し学校の監督責任を問い、事件は警察の手に委ねられる。だがその後、韓立洋と仲が良かった張睿斯という女子生徒が密室となった実験室で服毒死しているのをまた関月青が発見する。2人の死は偶然の自殺なのか。いま生徒に何が起こっているのか。





 


一見すると学園ミステリのジャンルのようだが、探偵役の主人公は教師であり生徒と一緒に推理することもないので単に学校が舞台のミステリとしか言えない。主な謎は生徒の飛び降り死と服毒死であり、2人の死の謎を究明しながら彼らの過去や交友関係が明らかになるが、現代の高校生を取り巻く環境や教育問題など社会問題のようなものも書いている。


 


前半の飛び降り死を受けて保護者に責任を追求される教師の様子を書いて、いかにも現代中国の社会問題を描写している感じだが結局は理不尽な保護者を書いて終わっている。もし掘り下げたいのなら保護者視点の描写も必要だし、死んだ子どもの親を一方的にヒステリックな敵役にするのはアンフェアだ。


 


しかも肝心のトリックがよりによって使い古されたアレとは。いや、例え有名な作家が「もう○○を使ったトリックは古い」と言っても誰が何のトリックを書こうか自由である。しかし、物語の途中に解明されるトリックならまだしもラストにこのトリックを持ってこられると「今まで300ページも読んでてコレかよと脱力感しか起こらない。


 


もう一つ気になるのが会話の多さだ。1人が1行分喋ったらもう1人がまた1行分だけ喋るという繰り返しで、テンポの良い会話といえば聞こえが良いが尺稼ぎにも思える。クソ映画はどうでもいい会話をして尺を延ばすという話を聞いたことがあるが、それは小説にも当てはまるんじゃなかろうか。


 


しかし、最近新星出版社とは相性が悪い。この前も小米という作者が新星から出した『空中小姐』(キャビンアテンダント)を読んだが、これは半分でギブアップしてしまった。衒学的と言うか、古今東西の名作から台詞や地の文を持ってきて貼っ付けまくったコピーアンドペースト小説という感じだった。超人的な記憶能力と推理力を持つ本屋の店主が事あるごとに各作品の有名をフレーズを口にしたり思ったりするんだが、もう作者に「凄いですね」としか言えない内容だった。ページ末尾に10ページ以上にわたる参考文献一覧が載っていることからどれほどの量を引用したかが分かるだろう。


 


 


実は謝筠琛も小米も推理小説家としては新人…だと思う。新星出版社が新人にミステリを書かせて業界に挑戦しているのだと思ったが、その試みは今のところ失敗しているとしか言えない。陸秋槎や時晨のようなトリックに重きを置く作家とは別の、ストーリーが個性的な作家を抱えて新規読者を増やそうとしているのかもしれないが、昔からのミステリ読者にはそっぽを向かれているのが現状ではないだろうか。


 


しかし、私にとって相性の合わないミステリは新星だけが出しているわけではない。統計を取っていないが感覚的には中国で「ミステリ」とつく国産小説がどんどん増えていっている感じだ。玉石混交の言葉通り、その中には面白いと思えない作品も当然存在する。つまらないと思えるミステリ小説が増えたのは、もしかしたら中国の出版社が「ミステリは売れる」と認識した証拠なのかもしれない。


 

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『唐人街探案』(Detective Chinatown)は2015年中国で上映されたコメディミステリーです。この216日に2が公開されたので、1を見てみることにしました。


 


抜群の頭脳と推理力を持つが吃音症のせいでうまく喋れない秦風は祖母のすすめで叔父・唐仁のいるタイに旅行へ行く。祖母から唐人街(チャイナタウン)1の名探偵と聞いていたが、探偵とは名ばかりでやっていることは迷い犬猫探しや荷物配達、しかも下品でガサツな性格の唐仁に秦風はタイに来て早々いやけが差す。だが、唐仁が殺人と黄金強盗の容疑者として警察やマフィアに追われ、秦風はなし崩し的に唐仁と共に彼の冤罪を晴らす逃避行に出る。


 


 


実はこの映画、最初は全然受け付けなくて全く面白いと思いませんでした。


その原因が唐仁の性格。彼は下品でガサツで、しかも人から好かれるところも見当たらない人間で、形容すれば人から嫌われてばかりの『こち亀』の両さんや『男はつらいよ』の寅さん、みたいな感じでしょうか。


 


しかし何より私を苛立たせたのは、彼が容疑者として負われている身であるにも関わらず探偵役の秦風に非協力的で、非合理的な行動ばかり取り、自身と秦風を窮地に追いやります。まぁそのあたりはコメディ映画なので上手くやるんですが、もし一般的なミステリー作品ならこういう人間はさっさと捕まるか殺されるかのどちらかですね。


 


唐仁は推理をほとんど重視せず結果(自分が犯人ではないという証拠)だけを欲しているので、秦風が事件現場に行ったり監視カメラを見たりする行為を無意味と思います。秦風は無理解な唐仁を説得したいのに吃音症が邪魔をして逆に彼に言い負かされます。


 


この映画では探偵役と助手役(容疑者役)の立場を単純な上下関係として成立させておらず、探偵だから彼の話を聞かなければいけないという態度を必ずしも取りません。


もしホームズがコミュ障だったら?もしワトソンがホームズより口が達者で強気な性格だったら?そのような「If」をコメディ映画の体裁で作ったのが本作です。


ちなみに秦風、推理しているときだけ全くつっかえずにスラスラ喋ります。「コイツ、推理しているときだけ早口になるの気持ち悪いよな


 


コメディ部分は結構ダサいというかベタなのに対し、ミステリー部分は結構しっかりした密室トリックになっていて、ミステリーシーンにコメディ要素は一切ありません。ミステリー部分とコメディ部分で脚本家違うんじゃないでしょうか。


 


結局、犯人のトリックが明らかになる中盤からコメディもミステリーも楽しめるようになり、見終わった時には早く2が見たいと思うまでになりました。コメディ箇所はコメディ映画として、ミステリー箇所はミステリー映画として切り替えて楽しむのが適切な見方だと思います。ただ、2はミステリー要素が薄いという噂です。


 


何ていうか、推理と言うのは周囲の理解がないと成立しないのだなぁと悟らせてくれる作品でした。余談ですが本作には歌野晶午青崎有吾の某作品のネタバレが入っていますので注意。


 

 


 


春節長期連休で暇なので中国の動画サイトで公式がアップしている中国映画を見ています。中国の動画サイトはサイト自体に一度お金を支払った後はその期間内有料映画も有料アニメも全て見放題になるので、時間があるときに一気に見ることができます。


 


んで、今日は同名の中国有名サスペンス小説を映画化した『心理罪』を2作品見ました。


 


『心理罪』とは作家であり中国刑事警察学院で刑法学を教えている雷米の書いた長編シリーズで、そのうちの『画像』と『城市之光』(都市の光)が2017年の8月と12月にそれぞれ映画化されました。しかしこの映画、確かに作品内のキャラクターなどは同じなのですが厳密には連作と言えず、1作目と2作目では映画監督もキャストも異なります。また、ドラマシリーズにもなっているのですがそれもまたキャスト等全く違います。


 


今回はその映画2作品のレビューをアップしますが、ガッツリネタバレしているのでご注意ください。


 


 



1作目『心理罪』


 


原作では2作目の『画像』を改編した映画。若き犯罪心理学の天才・方木と昔ながらやり方を好むベテラン刑事・廖凡が吸血鬼犯罪に挑む。


人の生き血と牛乳を混ぜて飲む連続殺人に遭遇した廖凡は知り合いの心理学者から方木を紹介される。実力は確かだが他人の気持ちを全く考えず、全然警察らしくない心理学馬鹿・方木に反感を覚えながらも彼を見守り、認めていく廖凡。方木も頭の固い廖凡に反発しながらも被害者を最優先する姿勢を貫く彼に尊敬の念を抱く。しかし犯人の魔の手は方木の恋人にも忍び寄る。


 


頭は良くてイケメンだけど全くの貧弱でしかも人も気持ちや空気が読めない方木と、中国語で「野獣派」と紹介されるほど男臭い廖凡の対比や和解を通じてお互いに足りない部分を補い合っていくという成長の物語です。


 


 


基本汗かいてるシーンばっかの廖凡


 


 


実習生のくせに直属の上司廖凡に「貴方は素晴らしい研究サンプルだ」と言ってしまう方木


 


方木のプロファイリングが何かもう超能力じみていて凡人には何故そのような結論を導き出せるかわからず、それが余計に廖凡を苛つかせて、視聴者に彼が天才児だという印象を与えるわけですが、その他にも本作には良くも悪くも現実離れした要素があります。「吸血鬼」に投与すると身体能力が格段に向上する薬とか、元ネタはあるんでしょうかね。


 


私は原作小説を読んでいないので、これが映画版オリジナルゆえの蛇足とも断言できないのですが、一番いらないなと思ったのが方木の駆使する「烏賊」と呼ばれる小型ドローンです。


彼はコレをラジコン以上の精度で自由に飛ばし、それと腕時計をリンクさせてリアルタイムの映像を見て、犯人の顔を認識するという機能を駆使して犯人を捕まえるわけですが、コレが特に現実離れしていて、不要だったのではと思いました。


 


コレ


 


天才犯罪心理学者・方木の誕生譚を描いていて総合的には「エピソード0」的なつくりで面白かったです。


 


 



2作目『心理罪之城市之光』


 


原作では5作目の『城市之光』(都市の光)を改編した映画。法律が裁けない人物をパニッシャー気取りで殺していく連続殺人鬼と天才犯罪心理学者・方木の悲壮な戦いを描いた作品だ。


 


都市を震撼させる連続殺人事件。被害者はいずれも自らの行動が原因で他者を死に追いやり、ネットで叩かれたが法律には裁かれていない人物だった。事件現場を調べる方木は遺留品に自分に結び付く情報が書かれていることに気付き、一連の事件は自分にメッセージを送るために起こしたものだと考えるがその矢先に「城市之光」と称する人物がネットに現れ、特設サイトのアクセス数が10万を超えたら少女に対して不当な弁護をした弁護士を爆殺するという劇場型犯罪を仕掛ける。旧友に容疑者がいると考えた方木は「君になりたかった」と方木を崇拝する高校の同級生・江亜と再会する。そして世論は徐々に「城市之光」を応援するようになり、犯人の魔の手は方木の養女・廖亜凡に向けられる。


 


 


都市を守る「城市之光」になることを誓った若き日の方木


 


 


自身が憧れた方木を殺し、悪を裁く「城市之光」になろうとする江亜


 


 


もとよりサイコパス気味だった友人がストーカーになってしまった方木は江亜に自身の最愛の娘(実の娘ではない)廖亜凡を殺されますが、なんというか見方によっては恋愛の邪魔者が死んだだけのように見えてしまうのはこの映画のヒロイン・米楠がいるからでしょう。犯罪事件の被害者・廖亜凡は方木と同棲していて、大人になったら彼と結婚すると息巻いており、その様子を方木の同僚の米楠は微笑ましく見ているのですが彼女も方木に好意を抱いています。廖亜凡の死に米楠もショックを受けましたが、気付いたらいつの間にか正妻ヅラしているので廖亜凡の無駄死に感が凄いんですよね。


 


 


この作品を10点満点で評価すると前半・中盤・後半がみな10点なのに対し、ラストがマイナス100点という、私にとって非常に納得できない終わり方をしています。


 


物語終盤、方木と江亜は「城市之光」の名前をめぐってタイマンバトルをします。実はそれは方木の罠で、彼は絶対に尻尾を出さない江亜が犯人だという確固たる証拠を得るために敢えて殺されに行きます。


 


そしてラスト、捕まった江亜や同僚たちの前で方木が事前に録画した映像が流され、警察及び中国人全員に対して「正義とは何か」というメッセージを発します。これだけでも噴飯物なのに、更に許せないのはここまでやっておいて実は方木が死んでいなかったことです。


 


原作通りかもしれませんが、当局に気を遣ったのかなと疑うほどラストの過剰なメッセージでとんだプロパガンダ映画に成り下がりました。


本作品のメッセージは途中で爆殺された弁護士の最期の言葉に十分表れているのです。爆弾を括り付けられた弁護士はとうとう助からないと悟り、方木らにこの場から離れるよう言い、そして「母親に伝えてくれ。自分はネットで言われるほど悪い人間ではないって」と遺言を残します。ネットで他人を攻撃していい人間など一人もおらず、またリンチされるべき人間も一人もいないのです。それを遵守するのは難しいかもしれませんが、しかし映画の最後にわざわざ言うべきことでもないのです。


 


 


ちなみに本映画はエンディングのスタッフロールで実際に警察や一般市民らが正義のために活躍した映像が次々流され、なんかまた微妙な気分にさせられます。


 


 


あとこれはツッコミではなく単なる疑問なのですが、中国では本作のようにネットを利用した劇場型犯罪って果たしてできるのでしょうか。ご存知、中国はネット規制が厳しく、特定の用語の検索結果を表示させないことや、海外のサイトを閲覧不可にさせることが可能です。


そのような国で、アクセス10万行ったら殺害というのは規制が追いつかないかもしれませんが、ネットのBBSに犯罪者を賛美するコメントを書き込めるのかどうかが疑問です。中国の社会派ミステリにおいて、中国人はこのような「矛盾」に遭遇した際いったいどのように消化しているのか、その辺りが気になります。


 


 


 神探福邇,字摩斯(名探偵フー・アル、あざなはモースー) 著:莫理斯

 1800
年代の中国清朝末期に辮髪のホームズがいた?彼の名前は「福邇」(フーアル)、字(あざな)は「摩斯」(モースー)。光緒年間、イギリスの植民地だった香港を舞台に、元軍人で医者の「華笙」と共に彼は警察も手を焼く難事件の数々を解決する。


 


 


香港の中国ミステリです。


中国語では非漢字圏の外国人の名前は音訳して中国語に表記されます。ホームズは「福爾摩斯」(発音はフーアルモースー)、相棒のワトソンは「華生」(ホアション)という表記になります。


本書は満州族で辮髪の名探偵「福邇」(福が名字)と偶然香港で知り合ってしまった「華笙」(華が名字)が彼と遭遇した様々な事件を記録した文書を、杜軻南(ドゥークゥナン、コナン・ドイルのもじり)という編集者が出版した『神探福邇全集』を整理して、現代で改めて出版したという体裁の短編集です。


 


収録作品をざっと紹介します。


 


血字究秘


怪我で軍隊を辞めた華笙は居留先の香港で福邇と言う物事全てを見通す男と出会う。そのとき殺人事件が発生し、警察に協力を求められた福邇と共に現場に向かう華笙はそこで「仇」と読める血のダイイングメッセージを発見する。


 


紅毛嬌街


アパート経営する老人季連徳のところに同じ一族だと主張する若者・季連昌が訪れ、家系図を写したいのでその間部屋を貸してくれと頼まれるが、いつまで経ってもその作業が終わらない。更に、アパートに住む西洋人の女性の挙動もおかしく、季連徳は福邇を有名『占い師』と見込んで彼らが何をやっているのか教えて欲しいと依頼する。


 


黄面駝子


スコットランド人の孟離窶(中国語名)はイギリス人の恋人・夏伊芙(中国語名)がイギリス人の退役軍人・バークレーから脅されているようなので、福邇に彼女を守って欲しいと依頼する。福邇と華笙が夏伊芙の調査をすると、彼女の周りに「駝子」(くる病患者)の中国人男性が潜んでいることに気付く。そして数日後、バークレーは遺体となって発見され、その駝子が容疑者として捕まっていた。


 


清宮情怨


お忍びで香港を訪れている清朝の王子から、金の指輪を盗んだ女性を捕まえるよう頼まれた2人。女性を見つけた福邇らだったが、王子はもとからその女性を殺すつもりで護衛の兵士に福邇たちを尾行させていた。福邇は女性の命を救うためにその兵士らとやりあうことになる。


 


越南譯員


フランスのために仕事するベトナム人華僑・陳が福邇を訪れ、同じく華僑の阮が何者かに誘拐されたと訴える。福邇は、辮髪もなく外国のために働く売国奴など助ける必要もないと怒る華笙をなだめながら、誘拐されたという証拠もないので力にはなれないと依頼を断る。しかし翌日、警察が訪れ、昨日誘拐された阮が解放され、代わりに陳が誘拐されたと知らされる。


 


買弁文書


欧米諸国と貿易する商人の何東は社員を募集する商社の社長・馬に賀という人物を推薦する。しかしその後、賀のもとに電報で馬の商社以上の好条件の仕事の紹介と、このことは誰にも言うなという警告がセットで届く。賀を馬の商社に推薦することが第三者にバレていたのではと疑う何東は情報流出を疑い福邇に調査を依頼する。


 


 


各話はおそらくホームズ作品のパスティーシュになっています。血字究秘」は「緋色の研究」、紅毛嬌街」は「赤毛組合」、「黄面駝子」は「背中の曲がった男」、「清宮情怨」は「ボヘミアの醜聞」、「越南譯員」は「ギリシャ語通訳」、「買弁文書」は「海軍条約文書事件」でしょうか。


 


 


福邇は原作同様、頭脳明晰であるばかりか当時最先端の科学技術も知っています。多言語に通じ、共通語の他に香港の広東語、留学先で学んだ英語、日本にも留学していたことがあるので多分日本語も可能という人材です。付け鼻とカツラを付ければ西洋人にもなれるという変装術を持ち、腕っ節も強い。本家ホームズとは違い、コカインではなくアヘンをやっているという当時の情勢を忠実に再現した(?)ちょっと危ない描写もありますが、清朝もイギリスも認めるほどの優秀な人物であることは間違いありません。


 


華笙の方も検死ができるし、人情味があるという設定で観測者としてよく周囲を見ています。基本的に外国人とも仲良くしますが、国際情勢における中国を憂いる愛国者でもあり、自国のために行動しない中国人に対して結構感情的です。


 


漢字がミスリードのもとになっていたり、方言が重要な鍵となっていたり、香港の言語や文化に理解がないと楽しむのが難しい一方で、当時の中国人は夜に自由に外出できなかった(外出証を持っていると可能)など、中国が置かれていた状況も知ることもできます。


本書は「第1集」という体裁ですので今後続編が出るのか期待。でもこれってシャーロック・ホームズの精巧なパロディということを考えるとずっとその路線で行くのはかなりしんどそうですね。


 

 


 


 


天野健太郎氏による日本語版が文藝春秋から出て、2016年後半から日本でブレイクした1367の原書(香港版)を読み終えました。2014年に原書が出版されたばかりの頃は全く反応しなかったのに、日本で売れたら慌てて読み始めるなんて典型的なミーハー的行動だなと自分でも思います。中国大陸でも最近になって一部の書店には繁体字版(香港や台湾で使われている中国語表記)の原書が置かれるようになりましたが、大体がライフスタイル関係やグルメなどおしゃれな書籍ばかりで、ミステリなどエンタメ書籍を大量に置いてある書店はまだ少ないです。しかもそのミステリも京極夏彦ら海外作家の繁体字版ばかりで、オリジナル作品がほとんどないというのが現状です。


 


なので、今回もいつも通り中国大陸のオンラインショッピングサイト「タオバオ」を使って大陸の代理店に香港から本書を取り寄せてもらいました。去年に注文してから届くまで1カ月ぐらいかかりました。値段は送料込みで90元(1600円)ほど。本体価格は350ニュー台湾ドル(約1300円)なので全然差がない。


 


 


 


本書は6編の短編小説からなり、2013年から1967年までの香港社会を舞台に、事件の一部始終をまるで見てきたように推理する「天眼」と呼ばれた敏腕刑事関振鐸が各時代の香港を象徴したような事件を解決するという警察ミステリ小説です。第1話が関振鐸の晩年、第2話が引退後の関振鐸、第3話が引退間際というように時間に逆行する構成になっていて、最後は1967年の香港暴動です。


 


日本語版が去年出ているのですでに詳しく書かれたレビューがたくさんあるでしょう。また、翻訳者自身が書いた紹介記事もあります。


 


陳浩基(ちんこうき,サイモン・チェン)『13・67』(執筆者・天野健太郎)


  


中国大陸側の反応を見てみますと、日本で「2018本格ミステリベスト10」や「2017年 週刊文春ミステリーベスト10、本格ミステリ・ベスト10」などの海外部門で1位を取ったことが中国のミステリ読者ほか多数の人々から注目されたようで、私がそのランキングトップの報を微博(中国版Twitter)に発表したところ一気にリツイートされ、10万回以上の閲覧数を叩き出しました(普段は300回ぐらい)。「日本で評判なら読んでみよう」というコメントもあり、ミステリにおける日本の信頼度の高さを実感しましたが、だからといって大陸でいきなりブームが来た形跡は見当たりません。SNSサイト「豆瓣」を見てみるとこれがきっかけで読者が爆発的に増えたということもなく、2014年に原書が出版されてから一定の頻度で好評のレビューが上がっています。


 


しかし、『1367』ブームと関係ないとは言えない話もあり、作者陳浩基(サイモンチェン)が過去に2回島田荘司推理小説賞を受賞した『遺忘刑警(日本語タイトル『世界を売った男』)が中国大陸で出版されるらしいです(あくまでも伝聞)。


 


島田荘司推理小説賞受賞作の中国大陸での出版は第1回受賞作『虚擬街頭漂流記』以降ありません。第5回受賞作の『黄』は作者が大陸の人間だったためか大陸での出版も早かったのですが、台湾や香港の作家の作品はなかなか大陸で出版されません。


 


『遺忘刑警』の大陸版出版が、今後島田荘司推理小説賞受賞作品の出版を促すことになるのか、それとも『1367』出版の布石になるのかは不明です。『1367』の最終話で1967年の香港暴動を書いているため大陸での出版はないだろうと言われています。


 


しかし香港では本書の映画化も決まっていると言いますし、だとしたら映画が何らかの形で大陸に入ることでしょう。そもそも本自体、タオバオとかを使えば香港や台湾から輸入できますし。


 


ですので、大陸版の出版は不可能かもしれないけど、大陸でも台湾や香港の文化を楽しめるチャンネルは今後も引き続き残してほしいなぁと思いました。


 


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